日経 2月5日
2024年02月05日
2024年2月5日(月)
・脱炭素を目的に新たに発行する国債を通じた政府の支援策が分かった。
初年度の2023年度は1.6兆円を調達し、
日本製鉄 <5401> [終値3550.0円]などが参画する
水素を使う製鉄技術の開発におよそ2500億円を、
ホンダ <7267> [終値1635.0円]などの
電気自動車(EV)向け電池の生産拡大に3300億円ほどをあてる。
産業構造の行方に関わる重要技術に投資し、国際競争力を高める。
「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」は
23年度からの10年間で20兆円を発行する。
2月中旬に初の入札を控え、初年度の具体的な使途が判明した。
1.6兆円のうち9000億円弱は研究開発支援に割り当てる。
・50年に国内の温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標実現に向け、
脱炭素技術の確立を狙う。
内訳で最大の支援は「製鉄工程の水素活用」で2564億円だ。
鉄鋼は日本のものづくりの基盤だが、既存の製鉄工程では大量の石炭を使うため、
国内の製造業で最も排出量が多い。
石炭の代わりに水素を使う手法の早期の実用化に向け、
日鉄 <5401> [終値35550.0円]やJFEスチール <5411> [終値2327.0円]、
神戸製鋼所 <5406> [終値2038.0円]の取り組みを後押しする。
・脱炭素につながる半導体の開発支援は総額750億円とする。
「光電融合」と呼ぶ消費電力を従来の100分の1に抑えられる半導体の開発が柱だ。
NTT <9432> [終値187.5円]や新光電気工業 <6367> [終値5418円]、
キオクシアなどに452億円を割り振る。
光電融合は電力を大量消費する生成AI(人工知能)の普及を支える
重要技術とされNTTが世界で開発をリードする。
中国も同技術を重視するなど海外勢も追い上げ姿勢をみせている。
政府はGX債を使って支援し、将来の日本の競争力向上につなげる。
・脱炭素につながる製品の生産拡大や導入支援には7000億円強を補助する。
最も大きいのは電気自動車(EV)などに載せる蓄電池で、
部素材も含め補助額を3316億円とした。
具体的にはホンダ <7267> [終値1635.0円]と
ジーエス・ユアサコーポ <6674> [終値2124.5円]のリチウムイオン電池投資に1587億円、
トヨタ <7203> [終値2951.5円]などが計画する投資には1178億円をそれぞれ補助。
車載用電池はEVの競争力を左右する。
日本企業は以前は高いシェアを誇ったが、
足元ではコスト競争力で上回る中国や韓国の企業が上位を占めている。
蓄電池は原料や部素材でも中国など特定国への依存が高く、
供給網(サプライチェーン)にリスクを抱える。
国内で蓄電池の部素材も含めた生産基盤を整備し安定供給につなげる。
・政府は未上場スタートアップのストックオプション(株式購入権、SO)発行手続きを簡素にする。
発行枠を株主総会で決めれば、株式として取得する際の権利行使価格や
取得可能な期間の決定は株主総会を経ずに取締役会の議決だけで決められるようにする。
小規模な新興企業にとって現状では機動的に権利行使価格や期間を定めることが難しい。
株主総会を開く事務負担も重く、制度の改善を求める声があった。
・防衛産業を考える(1) 安保・成長・平和の三兎追う 軍民両用で技術革新
1月初旬から防衛省に迎撃ミサイル「パトリオット」に関する企業の問い合わせが続く。
昨年末に国内生産品を対米輸出すると決めたからだ。
安全保障と技術革新の両面で自国の防衛産業が必要な時代となり、
政府は増額した防衛費を国産品に振り向け、企業はそれを成長機会と捉え始めた。
「ここに決めよう」。IHIは近く、東京・市ケ谷の防衛省から
目と鼻の先にあるオフィスビルに新たな事務所を置く。
政府が英国やイタリアと共同開発する次期戦闘機プロジェクトの拠点として使う。
・防衛産業を考える(1) 安保・成長・平和の三兎追う 軍民両用で技術革新
防衛力強化の取り組みは戦後の日本が堅持してきた平和主義との両立が欠かせない。
防衛産業が過去に談合や汚職の場となったことへの反省も要る。
そのうえで、米国や中国が産官学一体で最先端の防衛技術研究を進める
世界の現実に向き合わなければならない。
平和主義の旗は降ろさず、抑止力を高め、防衛技術を使った成長も探る。
「三兎」を追う新たな防衛産業のあり方を見いだすことが
日本という国家の将来像探しにもつながる。
・共同通信社が1/3、4に実施した全国電話世論調査によると、
内閣支持率は24.5%で、前回調査(1/13、14)の27.3%を2.8ポイント下回った。
岸田内閣としては昨年12月調査の22.3%に次ぐ最低水準となった。
・現在は書面での手続きが中心の保育所への入所申請が2026年度から
オンラインでできるようになる。
こども家庭庁は自治体ごとに異なる申し込み内容を統一し、
全国でスマートフォンなどがあればウェブ上で手続きを完結できる仕組みをつくる。
自治体が導入すれば使えるようになる。
親の負担を減らすとともに自治体運営の効率を高める。
入所する保育所の決定時期が早まる期待もある。
4月入所の申請には落選したり期限に間に合わなかったりした人向けに2次募集をする例が多い。
2次は1~2月に受け付けるため、
職場復帰する4月になっても入れる保育所が分からないこともあった。
遅くとも年度内に入所先を連絡できるよう目指す。
・米国で住宅購入のハードルがかつてないほど上がっている。
高金利と物件不足の影響で一般的な物件購入に必要とされる
年収が初めて10万ドル(約1500万円)を突破。
家賃も高騰し、ホームレス増加の一因とも指摘される。
アメリカンドリームである住宅購入の難しさは社会問題となり、
大統領選挙の争点にも発展しうる状況だ。
全米不動産協会(NAR)の試算によると、
全米で中央価格の物件を買うために必要な
最低限の年収は23年11月時点で約10万5000ドル。
全米の年収(中央値)の9万9000ドルを上回る。
購入時に求められる信用力も高まっている。
・ウェブ上の求人で募集賃金の上昇が続いている。
求人サイトのデータを基にナウキャスト(東京・千代田)が作った
新たな賃金指数は1/15時点で前年に比べ2.0%上がった。
同指数は政府統計の賃金の動きに5カ月ほど先行する。
春に向けて一定の賃金上昇が続く見通しを映す。
募集時の賃金の伸びは足元で物価の伸びに近づきつつある。
23年12月の消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数で
前年同月比で2.3%上昇だった。
・11月の米大統領選の共和党候補者指名争いは
2/24の南部サウスカロライナ州予備選が山場になる。
初戦アイオワ州から2連勝したトランプ前大統領が大勝すれば、
ニッキー・ヘイリー元国連大使に撤退圧力がかかる。
ヘイリー氏にとって知事を務めたお膝元だが、
前大統領が優勢に選挙戦を進めている。
ヘイリー氏の女性支持者の一人は
「彼女はトランプと違い超党派の協力も期待できる」と話す。
サウスカロライナは共和党員に登録していない無党派層も投票に参加できる。
ヘイリー氏が幅広い層に投票参加を促せるかが、巻き返しの鍵を握る。
・米大統領選の民主党候補者を選ぶ予備選が2/3、南部サウスカロライナ州で始まった。
バイデン大統領に有力な対抗馬はおらず、共和党候補と戦う本選への進出は確実だ。
バイデン氏はトランプ前大統領との対決を見据え、黒人票の獲得に照準を定める。
・伊藤忠商事 <8001> [終値6745円]
米国で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の開発に乗り出した。
用地選定や設備設計に加えて売電先を確保した上で土地などを売却する。
米国ではインフレ抑制法(IRA)による政府支援で太陽光発電の需要が伸びる見通し。
伊藤忠は2030年に米国での事業規模を約1000万キロワットと2倍に高める。
伊藤忠は米国で開発・売却する太陽光発電所の規模はこれまで約500万キロワットだった。
再生エネ需要が増える中、用地選定から担うことで30年には約1000万キロワットに引き上げる。
米国ではほかに太陽光発電所の保守事業も手掛けている。
開発案件の売却先に保守サービスも売り込む。
・ホンダ <7267> [終値1635.0円]2/4、
1月の中国新車販売が前年同月比57.3%増の10万960台だったと発表。
前年実績を上回るのは5カ月連続。
広告を積極的に打ち、消費者の来店を促した効果が出た。
セダン「アコード」や多目的スポーツ車(SUV)「CR-V」といった主力車種が好調だった。
ホンダは能登半島地震により部品供給が一部で滞っているため日本国内で減産している。
中国生産への影響については「現在のところ影響はない」(同社)とした。
・台湾の力晶積成電子製造(PSMC)記憶用半導体の磁気記録式メモリー(MRAM)の量産を目指す。
2024年前半に東北大学発で半導体技術を研究するパワースピン(仙台市)と提携する。
同社から技術供与を受け研究や試作を進めて29年から量産を目指す。
将来は生成AI(人工知能)向けデータセンターでの利用を期待する。
PSMCはSBIHD <8473> [終値3637.0円]と23年8月に合弁会社を設立し、
宮城県大衡村に半導体量産工場を建設する計画を進めている。
計画は27年稼働を目指す第1期と29年稼働の第2期に分かれ、総額8000億円を投資する。
政府も第1期に最大1400億円を補助する。
MRAMの量産は第2期の生産ラインを使って29年に始める予定。
パワースピンはMRAMのIP(回路設計)をPSMC側に提供する。
・米国で「電気自動車(EV)シフト」の減速感が日増しに高まっている。
米テスラは1月下旬、2024年は販売台数の伸び率が「著しく鈍化する」との見通しを示した。
「アーリーアダプター」と呼ばれる
新しいもの好きの富裕層に行き渡ったという見方は定着。
さらに「EV嫌い」で知られるトランプ前大統領が
11月の大統領選で再選するシナリオへの警戒も強まる。
共和党予備選で優勢なトランプ氏が再選すれば、
バイデン政権が拡充してきたEV支援策は一転、縮小を迫られるとみられている。
EVシフトの先頭を走ってきた米国メーカーに向かい風が吹く一方、
浮かび上がる格好となっているのが「最後発」の日本メーカーだ。
日本勢はEV化への着手で後手に回り、投資判断も遅かった分、EV減速の影響が相対的に小さい。
減速感が強まっているとはいえ、
EVが自動車分野の気候変動対策を担っていくという見方は変わっていない。
EVでは、得意だったはずの生産技術でもテスラの後手に回った日本勢。
足元のEV減速を奇貨として、技術優位を取り戻していくことを期待したい。
・トラック運転手や建設業、医師の残業時間の上限規制が2024年4月から始まる。
懸念されるのは人手不足に伴う配送などの作業の遅れだ。
こうした問題の解決をドローン(小型無人機)や
デジタルトランスフォーメーション(DX)を駆使して支援する企業の取り組みが注目される。
売上高300億円以下の中堅上場企業「NEXT Company」を対象に有力企業の戦略を探った。
・24年問題、ドローン・DXで挑む 物流などの人手不足緩和
【物流】
ビーイングHD <9145> [終値2836円]物流管理業務を代行 時価総額168億円 売上高230億円
ACSL <6232> [終値923円]物流向けドローンを開発・販売。137億円 16億円
スマートドライブ <5137> [終値1818円]法人車両のクラウド管理システムを提供 108億円 17億円
・24年問題、ドローン・DXで挑む 物流などの人手不足緩和
【建設】
スパイダープラス <4192> [終値681円]建築物のズメンや検査記録など一元管理できるアプリ提供
時価総額233億円 売上高24億円
ナレルグループ <9163> [終値3270円]技術者の育成や派遣を手がける 266億円 179億円
Arent <5254> [終値4780円]建設業界に特化したシステムの受託開発 283億円 20億円
・24年問題、ドローン・DXで挑む 物流などの人手不足緩和
【医療】
UbicomHD <3937> [終値1480円]医療機関向け業務支援ソフト開発 時価総額172億円 売上高52億円
メドレー <4480> [終値4730円]医療機関向けの中途採用の人材サービス 1502億円 141億円
eWell <5038> [終値1798円]訪問看護用の電子カルテを提供 268億円 16億円
・中小病院にソフト拡販 Ubicomホールディングス <3937> [終値1480円] 青木正之社長
医療機関向け業務支援ソフト開発を手掛ける。
医師の残業時間に規制がかかる「2024年問題」を背景に、
中核病院だけでなく中小病院からの引き合いも高まっている。
引き合いが強いのが医師の電子カルテ入力の支援ソフトだ。
人工知能(AI)が医薬品の処方量や飲み合わせなどを確認し、内容から想定される病名を提案する。
従来は診療後に記入することが多かったが、
AIによる作業の簡略化で残業時間を月に20時間削減できるという。
24年3月期の連結売上高は前期比22%増の64億円、純利益は68%増の9億6300万円を見込む。
今後は「電子カルテメーカーと協業し、手薄だった中小病院への拡販を急ぐ」(青木正之社長)。
ソフトで培ったブランド力を活用し、人材事業などに収益源を多角化したい考えだ。
・Focus〉〉注目企業グリッド <5582> [終値3345円] 輸送計画、AIで最適化
グリッドは人工知能(AI)を活用してインフラの運用を効率化するサービスを提供。
人手で行っていた物流や電力などの運用計画の作成をAIで代替し、最適な計画を導き出す。
物流業の人手不足が強まる状況下で、トラック、鉄道、海運を組み合わせた
最適な輸送計画を作成できるサービスの開発を急いでいる。
会社は2009年に設立。物流・サプライチェーン、電力・エネルギー、
都市交通・スマートシティーの3分野で事業を展開する。
海運会社の配船計画や電力の需給計画、渋滞予測などをAIを用いて
効率化するソフトを開発し、顧客の業務システムに組み込む。
24年6月期の単体売上高は前期比30%増の17億円、税引き利益は24%増の2億8400万円を見込む。
物流の効率化を目指す新規顧客からの引き合いに加え、
電力会社向けの需給計画作成の需要も堅調という。
幅広い輸送手段を組み合わせ、最適な輸送計画を作成するサービスについては
25年春ごろまでの開発完了を見込む。
今後3年間で試験的な利用を含めて10億円の売り上げを目指す。
・新NISAをきっかけとした家計革命は日本をどう変えうるか。
日本の株式市場は3つの構造問題を抱えている。第1は株主の老齢化だ。
全国家計構造調査と資金循環統計から世代別の上場株式保有額を推計すると、
60歳代以上が86.5兆円と全体の6割以上を占める。
第2の問題は個人がじかに株式を保有する割合の低下だ。
日銀によれば、かつて5割前後だった家計による株式直接保有割合は
2019年度には14.8%まで低下した。
こうした傾向は米国も同じだったが、08年のリーマン・ショックを境に上昇に転じ、
企業の成長と家計の購買力向上が相互作用する好循環が生まれた。
日本でも底入れの兆しはみえる。
第3は慢性的な売り手不足問題だ。
上場企業は過剰資本で自社株買いはするが新株発行は低迷。
過去4年は年平均5兆円以上の上場株式が消えた。
日銀は上場投資信託(ETF)を通じて時価推計60兆円以上吸い上げた。
企業の持ち合い解消売りも底がみえている。
・今週の日米株式市場は個別材料で振れやすくなりそうだ。
主要企業の決算で好業績が確認されれば相場を押し上げる材料になる。
一方、米不動産業界の不透明感への懸念が下値のリスクになる。
先週は米地銀のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が
商業不動産関連の損失を多く計上し、地銀株が軟調に推移した。
ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジストは
「市場はNYCBの個別要因と捉えているが、銀行や不動産への警戒感は依然としてある」と指摘。
・今週の原油相場は神経質な展開となりそうだ。
中東リスクがくすぶる一方、米連邦準備理事会(FRB)による
早期利下げ観測の後退や主要消費国である中国の景気悪化懸念で前週の上値は重かった。
経済指標や石油統計の発表に相場が左右される展開が続きそうだ。
・11月の米大統領選に向けた民主党候補指名争いの初戦を、
バイデン米大統領(81)が黒人票を手堅く固め圧勝。
・災害状況を把握する手段として、悪天候でも観測可能な人工衛星の存在感が増している。
元旦の能登半島地震に際し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は発生当初から緊急経済対策観測実施。
・欧州連合(EU)2/1、臨時首脳会議で、ウクライナ侵略を受け凍結された
ロシア中央銀行の資産から得た収益をウクライナ支援に使う方針で合意。
EU欧州委員会は資産が生む利子の活用を検討。
西側諸国は約3千億ユーロ(約47兆円)のロシアの外貨準備を凍結した。
・米巨大IT5社の2023年10-12月期決算が2/1、出そろう。
各社とも主力事業が好調、全社増収増益に。
アップル、最終利益339.16億ドル(前年同期比13%増)、マイクロソフト218.7億ドル(33%増)
アルファベット206.87億ドル(52%増)、メタ140.17億ドル(約3倍)
アマゾン・ドット・コム106.24億ドル(約38倍)
Posted by 占い ザ・ハーミット at 13:41│Comments(0)